橈骨神経麻痺の鍼灸治療
橈骨神経麻痺(Saturday night palsy)
「土曜の夜の腕枕」という艶っぽい名称になっておりますが、これになるととても辛い症状が起こります。

原因
一般的には腕枕や泥酔して寝てしまって腕が固いひじ掛けなどに押し付けられて起こると言われています。が、あまり知られていませんが案外多いのがSMの緊縛(縄で縛ること)事故によるものです。吊るされている状態で上腕が縄で締め付けられ体重がかかって圧迫されます。いくら気をつけていても事故が起こる時はおこってしまいます。

橈骨神経は腕神経叢の後神経束から出て上腕三頭筋の内側頭と外側頭の間にあり上腕骨の後面にある橈骨神経溝という溝を通って下降し上腕と前腕の伸筋を支配します。
図で(B)の部分は橈骨神経溝の部分で上腕骨の外側に神経が回り込んでおり、ここで神経が骨に押し付けられるように外側から圧迫されると神経の損傷が起こります。また脇の下(A)の部分で圧迫されるケースもあります。この部分は橈骨神経のみならず手の神経である尺骨神経や正中神経も通っていますので、それらに傷害が発生することもあるでしょう。
他にも絞扼性神経麻痺の好発部位として肘から先では短橈側手根伸筋起始部から始まるフロセ(Frohse)のアーケードという回外筋入口部の狭いトンネルに入るところで起こる「後骨間神経麻痺」というのもあります。
また両手を手錠のように縛ることで傷つけられると手根骨と靭帯でできている手根管の中で正中神経が慢性的に圧迫や絞扼が起こり痛みが生じます。
一時的なものなら長く正座した後で立ち上がった時のようにジンジン・ビリビリが一時的に起こる程度で済むでしょう。ちなみにこの状態は絞扼によって神経に繋がっている血管が圧迫され、血液が送り込まれなくなることでATP合成が妨げられ神経線維の細胞膜にあるカルシウムイオン(Ca2+)が細胞から離れて細胞膜の電気抵抗が低下したために活動電位が小さくなり伝達が阻害され、同時にナトリウム-カリウムポンプも阻害され・・・といった発生機序があるのですが、ポンプが回復し脱分極していた膜電位も正常(静止電位)になれば回復します。
症状
症状は神経の損傷があった部分によって違ってきます。
一番多いのは橈骨神経麻痺の「下垂手(Drop hand)」で、これは(B)の部分が損傷するとおこり、支配領域が親指と人差し指の辺りなので、ここに感覚の異常・麻痺などが生じます。
肘関節の屈側が損傷すると後骨間神経麻痺の「下垂指(Drop finger)」になり、これは手首の背屈は可能でも手指の付け根の関節の伸展ができなくなり感覚異常はないものの指だけが下がってしまいます。神経線維が麻痺している状態、ないしは感覚が無い状態を「シビレている」と表現する方もいますが、こういった状態を放置してはいけません。
神経は酸素不足の状態に弱く、潤沢に血液が行かなくなると情報を伝達できなくなります。また神経線維は髄鞘(ずいしょう)に被われ絶縁されていますが、そこが壊れていると神経の興奮が他の神経線維にも伝わってしまい嫌なジンジン・チクチクする感覚がいつまでも取れないで疼き続けます。
診断
傷害部を叩くと支配領域に疼痛が放散する現象であるチネル(Tinel)サインを確認することで、傷害部位を見つけることが出来ます。詳しくは病院で各種検査を受ける必要があります。
処置
外傷によるダメージが大きいものは手術が必要です。それ以外の保存療法的な処置(装具をつけたりビタミン剤などの内服や運動療法や保温など)で経過観察の場合は1~3か月を目途に次の方針をたてられることが多いようです。しかし、ここで鍼灸を開始すれば回復が早まります。施術開始は早ければ早いほどよく、予後も良好になります。
鍼灸

鍼灸は保存的療法で思ったような効果が得られない状況に対応でき、整体やマッサージなどの表面からのアプローチと違い直接損傷部位に刺激を加えることができるので時として絶大な効果を発揮します。
一般的に鍼灸院で扱われる神経麻痺の施術で一番多いのは顔面神経麻痺ですが、麻痺は得意分野といっていいでしょう。
具体的には、当院は損傷部位を特定し、その周囲に鍼を刺し微弱な電気を流して筋肉を強制的に動かして神経や筋肉に刺激を与えます。加えて超音波によって血行を促進し回復を早めます。早ければ数回で効果を感じていただけます。また、刺激を毎日加え続けるために自宅で自分で温灸や外側上腕筋間中隔を中心としたセルフマッサージなどをやっていただくこともあります。
写真は上から橈骨神経麻痺の鍼、温灸と皮内鍼、マッサージの指導、後骨間神経麻痺への鍼です。遠方よりお出でいただく方も多いので、なるべく効果が長く持続するようにトゲのような鍼を何か所かに絆創膏で留めて1週間ほど刺激を与え続けてもらう方法をとることもあります。
しかし、鍼といっても標準的な共通の方法があるわけでは全くなく、先生が違えば施術法や効果も違います。回数や期間も傷害の程度や発症原因、経過などによって違ってくるので一概に何回で治りますなどとは言えません。来院が難しい地方の方には知り合いの鍼灸院をご紹介させていただきます。
相談だけでも結構ですので、このような症状でお悩みなら一度連絡下さい。<<病気相談>>
足のシビレ
手と同様に足が痺れる症状でお困りの方は多いかと思います。
上記橈骨神経麻痺のページを見てお問い合わせをいただくこともあるので以下に最も多い足のシビレや感覚異常を引き起こす例を付け足します。
